●●会計事務所所長の●●です。
求職者の方にとっては、朗報です。
会計事務所・税理士事務所は慢性的な「人手不足」にあり、求職者の方にとっては就職しやすい状況にあります。
私たち会計事務所長にとっては悩みの種ですが、事実なのです。
しかし、注意してください。
●●●
会計事務所・税理士事務所の「人手不足」の実態。
まずは分かりやすく、人手不足の実態を数字でお見せします。
会計事務所・税理士事務所の「事務所の数」「従業員数」「売上」の推移
総務省統計局-経済センサスによる調査結果を見てみましょう。
2012年調査結果

2016年調査結果

少し見づらいかもしれないので、下記表にまとめます。
2012年 | 2016年 | 増加数 | 増加率 | |
---|---|---|---|---|
事業所数 | 24,583 | 26,773 | 2,190 | 9% |
従業員数 | 136,965人 | 156,687人 | 19,722人 | 14% |
売上高 | 1,197,546 百万 | 1,532,832 百万 | 335,286百万 | 28% |
会計事務所の売上高は、この4年間で約28%も増加しています。
一方で、各事務所の従業員数は約14%しか増加していません。
つまり、会計事務所に必要とされるサービスは大きく増加しているものの、従業員の増員が間に合っていないことを示しています。
これが「人手不足」を数値化した公開データです。
私の会計事務所や、知人の会計事務所の「人手不足」の実態
先述のとおり、数値上は人手不足が加速していることが分かりました。
では、実際に会計事務所を経営する私たちの「肌感覚」はどうでしょうか。
結論から言えば、かなり人手不足に悩まされています。
会計事務所では、人を採用する時に「求人サイト」「転職エージェント」に求人を出します。
ですが、私たちのような従業員10名以下の会計事務所には、滅多に人員が紹介されません。
規模の大きな会計事務所に人気が集中してしまう為です。
「未経験者OK」の求人が多いことも、人手不足の裏返し。
会計事務所の求人は「未経験者OK」と謳うものが少なくありません。
「経験者」を募っても応募がないため、「未経験者」も広く募集しなければならないのです。
ただし、未経験者OKの場合であっても「簿記3級」程度は要件として定めるケースが一般的です。
簿記3級保有者には、ある程度の「会計業界でのやる気」を確認できますし、教育コストも少なく済むからです。
特に小さな会計事務所では、教育コストを十分にかける余裕がありません。
そのため、いくら人手不足であっても、少なくとも「簿記3級」は保有して欲しいというのが私たちの本音です。
なぜ、会計事務所・税理士事務所では「人材不足」が続くのか?
会計事務所・税理士事務所への就職・転職を考えている方は、疑問に思うかもしれません。
「会計事務所・税理士事務所って、どうして人手不足が続いているの・・・?」
これにも、しっかりとした理由があります。
会計事務所での専門性が身に付くため、身軽に転職できてしまう
(私たち経営者にとっては)本当に悩ましいのですが、会計事務所の職員は、簡単に転職ができてしまいます。
なぜなら、会計事務所での実務経験は「他の会計事務所」でもそのまま活用することができるからです。
たとえば、会計事務所での仕事の1つに「会計ソフトを利用した仕訳入力」というものがあります。
●●KW:会計事務所 仕事内容
会計ソフトによって入力方法が違うのですが、会計ソフト自体の種類は限られているので、1つの会計事務所で大体マスターできてしまいます。
そして、そこでマスターした会計ソフトへの入力方法は、他の事務所でもそのまま使えてしまうのです…。
悲しいです。
頑張って育てた職員も、簡単に(もっと条件の良い)他の会計事務所に転職してしまいます。
でも、会計事務所で働く方々にとっては、キャリアの幅が広く喜ばしいことです。
人間関係で失敗するケースが多い
2つ目は、少しネガティブな理由です。
会計事務所・税理士事務所は、良くも悪くも「変わった人」が多い傾向にあり、人間関係で悩み転職される方がおられます。
特に小さな会計事務所では、所長によるワンマン経営の色が強かったりするため、人間関係に苦労される方が一定数おられます。
私も会計事務所にスタッフとして勤務していた過去がありますが、本当に変わった方が多かったです。(私自身も変わった人だと思いますが…)
他事務所の状況も似ており、所長に対する愚痴が多いと感じます。
●●KW:会計事務所 辞めたい
このような傾向から転職される方が多くなり、慢性的な人手不足が醸成されています。
予想外に忙しいケース
会計事務所はわりと安定しており、繁忙期と閑散期が明確に分かれる傾向にあります。
大体1月~3月が繁忙期、それ以外は閑散期という事務所が多いです。
しかし、事務所の方針によっては「コンサルティング」を請け負うケースもあり、これが閑散期であっても忙しくなるケースがあります。
この「コンサルティング」業務は、スポット契約(継続的ではない契約)が主となるため、基本的にスケジュールが読めません。
こうなると「一体いつまで忙しいんだ・・・」とストレスを感じるようになり、転職のしやすさも相まって、慢性的な人手不足となっているのです。
【注意】求職者にとってはチャンス。だけど1つだけ注意。
以上のとおり、会計事務所は人手不足が深刻のため、就職・転職はしやすいです。
しかし、だからこそ注意深く求人を探してください。
なぜなら、会計事務所側も人を採用するために必死だからです。
中には、悪い情報を隠し、良い情報を誇張して掲載するような会計事務所もあります。
「会計事務所・税理士事務所ならどこでも良い」という発想は、非常に危険です。
転職エージェントを利用することで内情を詳細にヒアリングし、ブラックな会計事務所を避けてください。
また、「簿記」「税理士科目」などの資格を取得し、武器を身に着けることも重要です。
「選ばれる側」ではなく「選ぶ側」になることが、転職の秘訣だったりします。